事故と安全性

更新日:2017年11月16日

水素爆発という言葉に代表されるように、水素は使い方次第では大きな事故を起こす可能性がありますが、燃料電池車では非常に厳しい安全対策が施されているため、水素爆発等による被害の心配はさほど必要ありません。

一般のガソリン車が爆発炎上するリスクよりも小さいものだという認識で大丈夫です。

水素は危険ではない

冒頭にも登場しましたが水素爆発という言葉がよく知られていて、世間的には「水素は危険」というイメージを持たれてしまっていますが、それは誤解です。まず、水素に火が着くためには次の2つの条件が揃う必要があります。

  • 空気中の水素濃度が4%~75%である状態
  • 静電気程度のエネルギーが発生している状態

後者の静電気に関しては、私たちの日常生活でもよく発生していますので、条件としてはかなり緩いのですが、前者の水素濃度に関しては部屋の中などといった屋内の空間でない限り、条件を満たすことはありません。

水素は空気よりも軽く、拡散性が非常に高いため、屋外などの開放された空間ではほとんど濃度4%以上にはならないのです。

燃料電池車とガソリン車の事故の比較

次の画像はアメリカで行われた燃料電池車とガソリン車の事故実験のものです。燃料電池車は水素タンクを、ガソリン車はガソリンタンクを、それぞれわざと破損させて炎上する事故を発生させています。

前述の通り、空気よりも軽い水素は垂直に空気中を上昇していくため、火柱が車体後部から垂直に上がっています。一方、ガソリンは液体で空気よりも重く、地面に広がるため、ガソリンそのものだけではなく、車体やタイヤごと炎上してしまっています。

水素の拡散性の高さが事故時の安全性の高さに繋がっていると言えます。

事故時の燃料電池車とガソリン車の比較
出典:Fuel Leak Simulation(燃料漏れシミュレーション)

左が燃料電池車で、右がガソリン車。事故3秒後にはどちらも炎が出ていますが、水素は拡散性が高いため、1分後には炎がおさまり、1分30秒後にはほぼ収束しています。

一方でガソリン車は時間が経つにつれて炎上の激しさが増しています。車内に人がいると仮定した場合、安全なのはどちらか、一目瞭然です。

3段階の安全対策が施されている燃料電池車

ここまでで、燃料電池車に用いされる水素は必ずしも危険なものではないということがお分かり頂けたかと思いますが、ここからは燃料電池車に施されている安全対策をご紹介します。

2014年12月に市販されたトヨタの燃料電池車「MIRAI」を例に挙げて、分かりやすく3つのポイントを押さえています。

ちなみに「燃料電池車の仕組みとメリットデメリット」というページにて、燃料電池車が走行する仕組みを図解しておりますので、そちらを先にご覧になった上で読み進めて頂く方が、より分かりやすいかと思います。

1.水素を漏らさない

最も根本的な安全対策として、水素タンク内の水素を漏らさないという点が挙げられます。

水素タンクには非常に強度の高い特殊素材を用いているほか、厚みもかなりあり、しっかりとしています。水素タンク内には350~700気圧という非常に高圧な水素が蓄えられるため、タンクには様々な技術が用いられているのです。

なお、トヨタが行った事故実験では、車体がクラッシュするほどの大きな衝撃を受けても、水素タンクは壊れることなく、水素が漏れることもありませんでした。

2.センサーで水素の供給を止める

事故や衝突などの際、ドライバーや同乗者を保護するためにエアバッグが搭載されていることはあまりに有名ですが、同様に水素タンクのメインバルブも閉じられます。

加速度センサーというセンサーが設置されていて、事故や衝突時にこちらのセンサーが反応し、そしてタンクのバルブが自動的に閉められるという流れです。

3.水素が漏れたら溜まらないようにする

1番2番の安全対策は水素タンクが破損しないためのものですが、こちらは万が一、水素タンクが破損したり、センサーが反応せずに水素の供給が止まらなかった場合などへの安全対策です。

当ページの冒頭で、水素濃度が4%を超えると着火する可能性があることを説明しましたが、その濃度を下げて着火しないようにしています。

具体的にどのような施策が施されているのかというと、水素タンクの下部や水素を供給するための配管が車体外に設置されているのです。こうすることによって、漏れ出してしまった水素が空気中に拡散されるため、水素濃度が上がることを防ぐことができます。

車体が炎に包まれた場合の安全対策

最後に、水素が火元となるケースではなく、外的要因で車体や水素タンクが炎に包まれてしまった場合の安全対策をご紹介します。一言で外的要因と言っても様々なケースがありますが、代表的な例は以下の2つのような場合です。

  • 車庫に燃料電池車を止めている状態で、家屋が火事になった場合
  • 事故で別の車が炎上し、そこから延焼した場合

これらのようなケースだと、車体や水素タンクが炎に包まれてしまいますが、想定しうる最悪の事態は「水素タンクが熱で破裂する」ことです。

前述の通り、水素タンク内は350~700気圧という非常に高圧になっていますので、破裂の際の衝撃も相当なものになることは想像に難くないです。

水素タンクが炎で熱されることで、タンク内の気圧が上昇してしまうため、破裂の危険性がある訳ですが、これを防ぐためにタンクに「溶栓弁」と呼ばれる特殊な金属でできた弁が設置されています。

この溶栓弁が炎で溶けるようになっていて、溶栓弁が溶けるとそこからタンク内の水素が放出されるという仕組みです。水素が放出されることでタンク内の気圧が低下し、破裂を防ぐことができます。